少年社中「DROP」

※※※ネタバレありの雑感です※※※

◆ハンプティチーム

初演は2002年3月。社中にエンタメ要素を求めていた私にとって好みじゃない作品だったのでほとんど話を覚えてなかったけど、見てるうち少しずつ思い出してきた。とはいえどれだけリメイクしたかとかは全然わからない。
※昔のストーリー
http://www.shachu.com/special/drop/drop4.htm

毎日失われる記憶を取り戻すために自ら吹き込むレコーダーに、物語の中で死ぬと現実に登場する男たちと、真実がわからずに見る初回が一番面白いタイプの映画っぽい作品だが、舞台のはじとはじで違う世界が展開し、最後はその境界を超えるのは演劇独特だなと思う。

杉山さんの熱演が見事だが、最後に娘が物語の中から出てきて加藤さんを殺したあたりの飛躍にいまいちついていけなかった。
結局ボウルは誰だったの?(曖昧な「知恵遅れ」のイメージではなく、高機能障害の観察とかに則った演技っぽいと思った)あの子を挟んで女2人での会話のとこが混乱してよくわからなかった。

テーマとしては、「つらい過去を忘れてしまえばいいとわかってはいるけど、それでも忘れられずに生きていくのが人間であることよ」と理解。
社中作品(シリアス寄りの)では昔、「女性という理解できない存在への恐怖」みたいなものが通奏低音としてうっすらあって、DROP(あと「slow」あたり)はそれが強く出ている作品という印象だったんだけど、いつのころからかそれが消えて、母性として昇華されたような気がしている。
今回も最後に「忘れられずに引きずってもがきながらやり直そうとする人間」への優しいまなざしが感じられた。

客席に向かって広がる照明がすごくきれいだった。
天井からたくさん吊られた舞台装置は、地下室の柱や鍾乳石や首吊り縄のイメージ。

感染対策にはめちゃくちゃ気を遣ってて、ロビーも客入れ時も会話は全然聞こえてこなかったし、最前列の人にフェイスカバーを配布してた。


◆ダンプティチーム

どっちも見ると、2枚の写真を左右に並べて立体画像が現れるかのように全体の解像度が上がるので、ダブルキャストってめちゃくちゃ面白いな!と思う。
個人の好みだと思うけど、ダンプティのほうが全体的に社中っぽいし湿っぽいと思った。エンディングで井俣さんと大竹さんが手を繋ぐと条件反射的に泣いてしまう。
死んだ娘をダンプティの大竹さんは無言で抱きしめるがハンプティでは杉山さんの悲痛な泣き声がピークだったり、感情のピークになるセリフが違うしいろいろな異なる演技・演出を比較するのが面白い。

卵を全部オービットに渡したときの「ありがとうは?」は、ハンプティのボウルのアドリブだと思うんだけど、これはかなりよかった。
スフィアは、ハンプティの堀池さんは巻き込まれたかわいそうなエリートなんだけど、ダンプティの人は最期がだいぶ狂っててこれはこれでよかった。
編集者はDV気質の内山さんとサイコパスの加藤さんのどっちも怖いけど悲しくてよかった。
ビーズは贔屓目だけど廿浦さんが圧倒的によかった。丁寧語で色気をふりまきながらオービットとの戦いではヤクザの本性が出て粗暴になり、獣に襲われると情けなく逃げ回る死にざまも素晴らしい。

2回見てもボウルが現実で誰に対応してるかわからない……。現実では編集者が小説家の母親を殺したらしいとわかったが、その母親の投影なのか?そもそも物語の中でボウルが犯した罪は(スフィアと関係ありそうだが)何なのか?理解力が足りてない。

暗いしエンタメ路線じゃないDROPはほぼ再演されないタイプの公演だと思っていたけど、こうして熱量高めのサスペンスものとして再演されたということは、ほかにも再演されなさそうな作品に再び日の目が当たるかもしれないのですごく楽しみ。個人的に、今だから見たいのは「エレファント」か「シナファイ」。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

日記内を検索