5月14日の日記
2013年5月14日金沢三泊四日旅行
某TCGの大会合わせで遠征。
中学生のときに金沢に住んでいたので、昔を懐かしみ観光も兼ねてゆったりスケジュールで飛行機を取っていたのだが、直前になってものすごく忙しくなってしまい、なぜ私はこんなスケジュールで旅行を入れたのかと説教したい気分だった。
5月10日(金)1日目
13日締め切りの仕事があり、早起きして出発前に終わらせておこうと思ったが、朝起きたらものすごく具合が悪かったので、結局PCや資料を荷物に追加することになった。
PCから離れ、電車の中でもあまり本とか読まなかったせいで、夕方空港に着いたらだいぶ体調が回復してきて、待合室で素うどんを食べた。
飛行機の飛んでいる時間は実質40分くらいで、あまり高く飛ばなかったからか耳が痛くならなかった。揺れが予想されたため冷たいドリンクしか出ず、リンゴジュースをもらった。
空港から金沢駅までのバスのほうが飛んでる時間より長いし、1100円もしてお高い。片町と香林坊のあたりは、地形は覚えてるけどお店は見てもまったく記憶がよみがえらない。そもそも住んでたの20年前だし。109にスタバなんてなかったが、角のミスドは昔からあった気がする。
小雨の中、香林坊のホテルにチェックインし、向かいの大和のレストラン街に行って、1人も客のいないレストランに入り、「ハントンライス」を晩ご飯に食べる。平たいオムライスにケチャップとマヨネーズをかけ、上にエビフライと白身魚のフライをのせてさらにタルタルソースをかけたもの。金沢名物のB級グルメらしいが知らなかった。750円とリーズナブルなわりに量がすごく多くて、半分くらいで気持ち悪くなってしまった。
食べている間に、21時になるとシェフたちが帰っていった。22時閉店とのことだが、ほかの店にも客は全然見かけない。バイキングレストランとか、やっていけるのだろうか。
ホテルに戻って風呂につかりながら金沢のガイドブックを読み、パーツだけ持ってきていたデッキを組んで、テレビでBSのまったりした番組をBGMがわりにしてテキスト書きの仕事を進める。
5月11日(土)2日目
朝、ためしに電話してみたら忍者寺(正しい名前は妙立寺だが、しかけがたくさんあるので忍者寺と呼ばれる。忍者とは関係ない)の予約が取れ、雨が強かったのでタクシーで行く。
大勢の見学者を何グループかに分け、手際よくお姉さんたちが案内していく。昔一度来たときはどんでん返しもあったような気がしたんだけど、なかった。どこか別の忍者屋敷と混同してるのか?
隠し階段とか隠し扉とか隠し落とし穴とかいっぱいあって面白い。複雑な造りをよく設計したなと思う。作った人はきっとゲーマー思考だった気がする。切腹の間が中から開かないってのが怖いけど、使われたことはなかったそうで安心した。井戸の隠しトンネル、テレビ番組とかで一度調査してみればいいのに。
お土産屋で忍者グッズを見たりとうがらしと梅のお茶を飲んだりして、徒歩で香林坊まで戻り、金沢カレーの老舗とガイドブックに載っていたターバンカレーで昼ご飯。お昼どきで混んでいた。基本のカレーの小450円。ドロドロで黒い。ゴーゴーカレーは食べたことないけど似ているらしい。金沢カレーの定義は、ドロッと濃くてステンレスの皿に盛られて千切りキャベツがついてて先割れスプーンないしフォークで食べること。個人的に千切りキャベツはあまりカレーに必要ない気がするが、ライスの代わりに全部キャベツでカレーを食べる猛者もいるんだとか。
そこから近くの21世紀美術館へ。雨のため「スイミング・プール」(http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=30&d=7)のそばに行けず残念。常設のコレクション展(350円)のチケットだけ買って入り、下側には入った。
展示自体はそんなに数がないが、ひとつずつじっくり見てかなり面白かった。特に「カプーアの部屋」(http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=30&d=5)。奥行きのある巨大な穴があるんだけど、内壁が青く塗られているとはとても見えず、そもそも穴ではなく黒い布が張ってあるように見えるのだが、布も見えない。見れば見るほど何も見えない、まさに「はてしない物語」に出てくる虚無。「そこを見たときだけ自分が盲目になったように感じる」と表現されている虚無ってこんななのかーと思った。
あと木村太陽の、大量の鳩の群れの上を、力いっぱい箱を転がすのも面白かった。鳩の作り物は頭の部分が滑車になっていて、軽い骨組みだけの箱を上に滑らすと、その滑車で転がっていく。試しにやったら係員のお姉さんに「けっこう進みましたね」と言われたので、思いっきりやっていいものなのかと思って再度力いっぱい押したら、もう少しで鳩の群れを横断できそうなところまで行った。そのたびごとに係員が鳩の間を縫って箱を回収に行く。別に何の意味もないけどビジュアル的に奇妙で体感的に面白い。
匿名で見知らぬ人に手紙を送って撮影させてもらう「ストレンジャー」企画はファンタジーっぽいし、糸くずやピンによる不可解だけどなんだか可愛いアニメーションは、NHK教育に出てきそう。水玉だらけのうねうねした陶器の群れは、てっきり草間彌生かと思ったら違う人だった。
入らなかった企画展「内臓感覚」のほうでやっていたライブパフォーマンス(あとで調べたら「オル太」)がまた面白かった。びしょびしょになりながら布袋をかぶった人が3人いて、ぐにゃぐにゃしたオブジェの間を舞踊めいて動き回っている。中に両手を上に上げてV字っぽい袋をかぶった人がいて、両手をモニョモニョさせてから突然上にビシイッ!って広げる動きが異様におかしくて、笑ってしまった。通り過ぎる人たちも「シャバッ!」とか言いながら真似していた。とてもまじめくさって見ていられない。「こういうのはいったい何を表してるんだろうなあ」と言いながら通り過ぎていく人たちもいたけど、たとえば「彼は赤血球、あっちの彼は白血球をやっているんですよ」とでも言われたとして、「ふーん」とは思うけど、「袋をかぶった人が変な動きをしている」ようにしか見えないよなぁ。
普通に使われているトイレの中に祭壇があるのは二週目で見つけた。「膿よ お疲れ様」とかの文字とともにハミングと光で妙に安っぽくもある。
動線がないのでうろうろしつつ一通り見て回って、こんなに面白いなら企画展のチケットも買えばよかったと後悔しつつ、せっかくだから県立美術館にも行って常設展(350円)を見る。
三代徳田八十吉の大皿とかあるかなと思ったら、小さいの五枚組しか置いてなかった。古九谷はいっぱいあった。美術品というより工芸品に近いものも多いが、細工の細かさと質の高さは、どこからどう見ても値段が高そうなにおいしかしない。
帰り道の喫茶店でチーズケーキとカプチーノで休憩。久々に30分くらいボーッとする時間を得た。
片町の大通り沿いの九谷焼の店に入ったら三代徳田八十吉の花瓶や壺が30万円からだった。意外と買えなくもない値段なんだな。日本語ジェイスフォイル+αくらい。
県立美術館で売ってた、古九谷の大皿を模した豆皿が、美術館だと840円だったけどここだと600円台だった。ちなみにひがし茶屋街のみやげ物屋で1050円だった。裏の銘を確認したが全部同じもの。欲しいけどあのサイズはほとんど使わないんだよな……。
片町のアニメイトとホビーステーションに行って、晩ご飯にはガイドブックに載っていたチャーシュー麺しかメニューのないラーメン屋に行く。チャーシューはけっこうおいしかったが、まあ普通。もっとチャーシューで埋め尽くされてるのかと思ったら沈んでて、見かけが普通だった。
帰ってまた仕事。
5月12日(日)3日目
朝は食欲がなく、コンビニでジャムパンとツナマヨおにぎり、野菜ジュースを買って大会の会場へ。会場の片隅にPCを設置し、ラウンドの合間にテキストを書きながら6回戦を終え、書き終わったテキストを提出。
地元の人にひがし茶屋街へ行くなら周遊バスがお勧めと言われ、ちょうど通りがかった周遊バスに乗ってみた。海外の観光客ばかりだった。駅を回って、ずいぶん再開発されたけど、まだガラガラな雰囲気だというのがわかった。
ひがし茶屋街は入り口が本当に観光地か?という感じだったけど、入っていったら写真の通りの風景があった。
昔はまったく興味がなくて一度も来たことなかったけど、古い町家とか、伝統の技術を今の感性でリメイクした雑貨小物とか、今ブームだし面白いだろうと思って行ったら、だいたい予想通りで、友禅や金箔や九谷焼などのおしゃれな小物をとりそろえた雑貨店とか、カフェとか、夜は高いけど昼なら懐石弁当2~3000円くらいの小料理屋とかがぽつぽつ並んでいた。しかしだいたいどの店も入り口にのれんがかかっていて、中が見えにくく入りづらい。そしていくつかのお店はもう閉まっている時間帯だったこともあり、開いてるのかどうかわからない店も多かった。
加賀麩の店で詰め合わせを買った。そんなに広くないので一回りしたらもうおしまいで、尾張町の百万石通りの一本裏を歩いて近江町市場に裏側から入って通過。お店は全部閉まっていたが海鮮丼の店だけはけっこう人が入っているようだった。近江町市場の表側のバス停は、昔は狭い汚い軒下に人々が肩を寄せ合っていた印象なのだが、ミスドのあるビルの入り口フロアに変貌していた。
歩いて帰る途中、塾の帰りに使っていたバス停も通ったけど、昔はあんな屋根なんてなくて雨のときも吹きさらしだったはず。
野菜たっぷりのパスタとサラダあたりを食べたいと思い、香林坊の欧風カジュアルレストランに目をつけていたんだけど、行ってみたら貸切営業になっていたので、大和の地下でお弁当を買うことに。18時過ぎだともう閉店セールで、600円のそぼろと煮豚と野菜の煮物の弁当が400円になっていて、RF1の炙りサーモンとオレンジ入りサラダも500円くらいのが300円ちょいで買えた。
弁当を食べてのんびり本読んでたら、なんだかおなかがすいてコンビニに行き、たらチーズとカルパスとさきいかのおつまみセットを買ってきて食べ、おなかがふくれる。やたらと化学調味料の味がするけど、おいしいにはおいしい。
お風呂に入ってさらにコーヒーゼリーを食べていたら、テレビで「探偵はBARにいる」をやっていたので見ながらこの日記を書く。そのあともダラタラテレビをつけていたら、松田龍平がまた「まほろ駅前番外地」というドラマに出ていて、二人組の探偵っぽかったので似てる!と思って見ていたらなかなか面白くて最後まで見てしまった。松田龍平がツンデレっぽく甘えてたり、エンディングにわちゃわちゃしてるシーンを入れたりして腐女子をねらってる気がする。狙われてると思いつつもイイネ!と思ってしまう悲しいサガ。
5月13日(月)4日目
ホテルに荷物を預けて、バスで昔住んでいたところへ行く。バス停角にある個人商店はついに店じまいしたらしい。まわりに多少新しい宅地開発がされていたけど、前いたところは豆腐屋も残っていて全然変わっていなかった。
いつも通っていたスーパーへ。入って左手の広い通路の突き当たりにあったごく小さい本屋に入り浸っていた記憶があるが、中はまるきり変わって左手は全部ドラッグストアになっていた。そりゃ20年たってるわけだし。歯ブラシを買わなきゃと思っていたので、ペットボトルのついでに買う。
隣の回転ずしにもよく行っていたのでここで早めの昼ご飯を食べようと思ったが、開店まで30分あるので向かいのココスに入り、シーザーサラダだけ頼んでサービスのスープを飲み時間をつぶす。昔は「くるくる寿司」って名前だったけど、「もりもり寿司」に変わっていた。親子いくら、煮穴子、炙りサーモンを食べたらおなかいっぱいに。
そこから少し戻って通学路を歩くがあまり道順を覚えていない。というか、昔はいろんな道を好き勝手に歩いていたような気がする。
夢の中の自分が住んでいる町というのがあって、昔住んでいた土地いくつかのエッセンスがミックスされてできあがっており、もっとも根幹の要素を作っているのが金沢の家。大通りから一本奥まった通り沿いに家があり、川沿いに行くと林の中の精神病院、右手に進むと田んぼと曲がりくねったお屋敷街を抜けて、スーパーのある大きな四つ角。そこを右に行くと街、奥に行くと知らないエリアと山。左に行くと学校方面。左からさらに左に入ったあたりは西洋風のお屋敷があり、いつも練習をさぼっているエレクトーン教室もある。事実とはだいぶ異なる部分もあるがだいたいの位置関係は同じ。
そして、実際の昔の風景を思い出そうとするのと、夢の中で見た景色を思い出そうとするのは、頭の中では同じ操作なので、実際の記憶と夢の中の記憶はもはやごちゃ混ぜになっている。精神病院は私の記憶と異なり、林にさえぎられてもいないし窓に格子がはまったりもしていなかった。
記憶にはなかったが、見ると思い出す場所というのが多くて、そういう要素は夢の中の街にもない要素だから、妙にリアル。仏具店の看板とか、スケバンの子の実家の医院とか。マンション下の飲食店の並びに、金沢風カレーの店が新しくできてた。
景色を見ながら通り過ぎたあとで、もう一度その風景を思い出そうとすると、今見たばかりの景色なのに、長年夢の中で親しんでいる街のイメージが色濃く、夢の中の景色とさっき見た景色が表裏一体となって、角度を変えると絵が変わって見える絵はがきみたいに、チラチラと二つの風景が見え隠れする。そういう変な気分を楽しみながら歩く。
読んでる人にとっては「こいつ何言ってんだ」って感じだろうけど、自分でも「何言ってんだ」って感覚はある……。
学校の手前の田んぼ沿いの道で、田んぼのふちギリギリの側溝のフタを歩いていたらものすごく「これ昔もやってた!!!」という感覚がよみがえった。
しかし、あんな遠い道のりをよくトロンボーン持って雪の中毎日歩いたりしてたな。信じられない。
真昼間の太陽をほぼ真上から浴びて、日射病予防のために登山並みのペースでポカリスエットを飲みながら学校まで行って、帰りはバス。
学校から左奥にある別の狭い通りを戻るバスがあるはずで、精米自販機の向かいにあったはずのバス停を探すが見つからない。精米機はさすがになくなっていたがその名残はあり、近くに別のバス停を発見。察するに大きなバイパス通りが作られ、バス停がそっちに移った模様。確かに、そのバイパスからすぐに曲がって元の狭い通りに入った。行きのバス代が230円で、思ったより高かったなと思っていたのに帰りはなんと330円もとられ、料金表を二度見した。
わりと早く戻ってきたので、せっかくだから兼六園にも行くことに。すごく天気が良いので新緑があざやか。くずきりがあったら食べたいなと思っていたがお団子かお高い抹茶ばかりだったので、何も食べず。古めかしいお土産屋にふと入ったら、古九谷コピーの小皿が630円だったので、こんなに何度も見かけて何度も欲しいと思うんだから、もう自分のためのお土産として買ってしまうことにした。
帰り際に21世紀美術館へ寄り道。休館日だけど、外の色ガラスを組み合わせた「カラー・アクティヴィティ・ハウス」のきれいな色つきの影と、タレルの部屋(若者のたまり場みたいになってた)の四角く切り取った空がとてもきれいに見られてよかった。
ホテルで荷物を回収し、バスで空港へ。ホテルでバス券を買うと100円引きになる。空港でお土産を買ってスーツケースに詰めて預ける。帰りの飛行機は遠回りして飛ぶようで実質1時間くらいかかる。名古屋のほうまで行ってから海沿いに東京を目指す感じ。下のほうを飛ぶ飛行機とすれ違ったら、まさに「ぶっ飛んでいく」ような早さですごかった。雪の残った緑の山脈や大きなダム、名古屋の街、降りてきてからは幕張メッセにディズニーランドにスカイツリーにお台場と、非常によく見えて面白かった。
羽田空港で晩ご飯にパスタを食べたいと思い、高くて尻込みするが、思い切っておしゃれカフェ系の店に入り、単品で1300円もするキノコとホウレンソウのアーリオオーリオを頼む。キノコの風味がしっかりしてて、チーズを削って山盛りかけてくれたのはいいけど、全体的に味が茫洋としていてアーリオオーリオって雰囲気ではなく、1300円も払うおいしさではなかった。
帰りの電車がけっこう込んでたけど、今回の旅で1ページ目から読み始めた「エンディミオンの覚醒 下」を、家の3駅前で読み終わった。
某TCGの大会合わせで遠征。
中学生のときに金沢に住んでいたので、昔を懐かしみ観光も兼ねてゆったりスケジュールで飛行機を取っていたのだが、直前になってものすごく忙しくなってしまい、なぜ私はこんなスケジュールで旅行を入れたのかと説教したい気分だった。
5月10日(金)1日目
13日締め切りの仕事があり、早起きして出発前に終わらせておこうと思ったが、朝起きたらものすごく具合が悪かったので、結局PCや資料を荷物に追加することになった。
PCから離れ、電車の中でもあまり本とか読まなかったせいで、夕方空港に着いたらだいぶ体調が回復してきて、待合室で素うどんを食べた。
飛行機の飛んでいる時間は実質40分くらいで、あまり高く飛ばなかったからか耳が痛くならなかった。揺れが予想されたため冷たいドリンクしか出ず、リンゴジュースをもらった。
空港から金沢駅までのバスのほうが飛んでる時間より長いし、1100円もしてお高い。片町と香林坊のあたりは、地形は覚えてるけどお店は見てもまったく記憶がよみがえらない。そもそも住んでたの20年前だし。109にスタバなんてなかったが、角のミスドは昔からあった気がする。
小雨の中、香林坊のホテルにチェックインし、向かいの大和のレストラン街に行って、1人も客のいないレストランに入り、「ハントンライス」を晩ご飯に食べる。平たいオムライスにケチャップとマヨネーズをかけ、上にエビフライと白身魚のフライをのせてさらにタルタルソースをかけたもの。金沢名物のB級グルメらしいが知らなかった。750円とリーズナブルなわりに量がすごく多くて、半分くらいで気持ち悪くなってしまった。
食べている間に、21時になるとシェフたちが帰っていった。22時閉店とのことだが、ほかの店にも客は全然見かけない。バイキングレストランとか、やっていけるのだろうか。
ホテルに戻って風呂につかりながら金沢のガイドブックを読み、パーツだけ持ってきていたデッキを組んで、テレビでBSのまったりした番組をBGMがわりにしてテキスト書きの仕事を進める。
5月11日(土)2日目
朝、ためしに電話してみたら忍者寺(正しい名前は妙立寺だが、しかけがたくさんあるので忍者寺と呼ばれる。忍者とは関係ない)の予約が取れ、雨が強かったのでタクシーで行く。
大勢の見学者を何グループかに分け、手際よくお姉さんたちが案内していく。昔一度来たときはどんでん返しもあったような気がしたんだけど、なかった。どこか別の忍者屋敷と混同してるのか?
隠し階段とか隠し扉とか隠し落とし穴とかいっぱいあって面白い。複雑な造りをよく設計したなと思う。作った人はきっとゲーマー思考だった気がする。切腹の間が中から開かないってのが怖いけど、使われたことはなかったそうで安心した。井戸の隠しトンネル、テレビ番組とかで一度調査してみればいいのに。
お土産屋で忍者グッズを見たりとうがらしと梅のお茶を飲んだりして、徒歩で香林坊まで戻り、金沢カレーの老舗とガイドブックに載っていたターバンカレーで昼ご飯。お昼どきで混んでいた。基本のカレーの小450円。ドロドロで黒い。ゴーゴーカレーは食べたことないけど似ているらしい。金沢カレーの定義は、ドロッと濃くてステンレスの皿に盛られて千切りキャベツがついてて先割れスプーンないしフォークで食べること。個人的に千切りキャベツはあまりカレーに必要ない気がするが、ライスの代わりに全部キャベツでカレーを食べる猛者もいるんだとか。
そこから近くの21世紀美術館へ。雨のため「スイミング・プール」(http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=30&d=7)のそばに行けず残念。常設のコレクション展(350円)のチケットだけ買って入り、下側には入った。
展示自体はそんなに数がないが、ひとつずつじっくり見てかなり面白かった。特に「カプーアの部屋」(http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=30&d=5)。奥行きのある巨大な穴があるんだけど、内壁が青く塗られているとはとても見えず、そもそも穴ではなく黒い布が張ってあるように見えるのだが、布も見えない。見れば見るほど何も見えない、まさに「はてしない物語」に出てくる虚無。「そこを見たときだけ自分が盲目になったように感じる」と表現されている虚無ってこんななのかーと思った。
あと木村太陽の、大量の鳩の群れの上を、力いっぱい箱を転がすのも面白かった。鳩の作り物は頭の部分が滑車になっていて、軽い骨組みだけの箱を上に滑らすと、その滑車で転がっていく。試しにやったら係員のお姉さんに「けっこう進みましたね」と言われたので、思いっきりやっていいものなのかと思って再度力いっぱい押したら、もう少しで鳩の群れを横断できそうなところまで行った。そのたびごとに係員が鳩の間を縫って箱を回収に行く。別に何の意味もないけどビジュアル的に奇妙で体感的に面白い。
匿名で見知らぬ人に手紙を送って撮影させてもらう「ストレンジャー」企画はファンタジーっぽいし、糸くずやピンによる不可解だけどなんだか可愛いアニメーションは、NHK教育に出てきそう。水玉だらけのうねうねした陶器の群れは、てっきり草間彌生かと思ったら違う人だった。
入らなかった企画展「内臓感覚」のほうでやっていたライブパフォーマンス(あとで調べたら「オル太」)がまた面白かった。びしょびしょになりながら布袋をかぶった人が3人いて、ぐにゃぐにゃしたオブジェの間を舞踊めいて動き回っている。中に両手を上に上げてV字っぽい袋をかぶった人がいて、両手をモニョモニョさせてから突然上にビシイッ!って広げる動きが異様におかしくて、笑ってしまった。通り過ぎる人たちも「シャバッ!」とか言いながら真似していた。とてもまじめくさって見ていられない。「こういうのはいったい何を表してるんだろうなあ」と言いながら通り過ぎていく人たちもいたけど、たとえば「彼は赤血球、あっちの彼は白血球をやっているんですよ」とでも言われたとして、「ふーん」とは思うけど、「袋をかぶった人が変な動きをしている」ようにしか見えないよなぁ。
普通に使われているトイレの中に祭壇があるのは二週目で見つけた。「膿よ お疲れ様」とかの文字とともにハミングと光で妙に安っぽくもある。
動線がないのでうろうろしつつ一通り見て回って、こんなに面白いなら企画展のチケットも買えばよかったと後悔しつつ、せっかくだから県立美術館にも行って常設展(350円)を見る。
三代徳田八十吉の大皿とかあるかなと思ったら、小さいの五枚組しか置いてなかった。古九谷はいっぱいあった。美術品というより工芸品に近いものも多いが、細工の細かさと質の高さは、どこからどう見ても値段が高そうなにおいしかしない。
帰り道の喫茶店でチーズケーキとカプチーノで休憩。久々に30分くらいボーッとする時間を得た。
片町の大通り沿いの九谷焼の店に入ったら三代徳田八十吉の花瓶や壺が30万円からだった。意外と買えなくもない値段なんだな。日本語ジェイスフォイル+αくらい。
県立美術館で売ってた、古九谷の大皿を模した豆皿が、美術館だと840円だったけどここだと600円台だった。ちなみにひがし茶屋街のみやげ物屋で1050円だった。裏の銘を確認したが全部同じもの。欲しいけどあのサイズはほとんど使わないんだよな……。
片町のアニメイトとホビーステーションに行って、晩ご飯にはガイドブックに載っていたチャーシュー麺しかメニューのないラーメン屋に行く。チャーシューはけっこうおいしかったが、まあ普通。もっとチャーシューで埋め尽くされてるのかと思ったら沈んでて、見かけが普通だった。
帰ってまた仕事。
5月12日(日)3日目
朝は食欲がなく、コンビニでジャムパンとツナマヨおにぎり、野菜ジュースを買って大会の会場へ。会場の片隅にPCを設置し、ラウンドの合間にテキストを書きながら6回戦を終え、書き終わったテキストを提出。
地元の人にひがし茶屋街へ行くなら周遊バスがお勧めと言われ、ちょうど通りがかった周遊バスに乗ってみた。海外の観光客ばかりだった。駅を回って、ずいぶん再開発されたけど、まだガラガラな雰囲気だというのがわかった。
ひがし茶屋街は入り口が本当に観光地か?という感じだったけど、入っていったら写真の通りの風景があった。
昔はまったく興味がなくて一度も来たことなかったけど、古い町家とか、伝統の技術を今の感性でリメイクした雑貨小物とか、今ブームだし面白いだろうと思って行ったら、だいたい予想通りで、友禅や金箔や九谷焼などのおしゃれな小物をとりそろえた雑貨店とか、カフェとか、夜は高いけど昼なら懐石弁当2~3000円くらいの小料理屋とかがぽつぽつ並んでいた。しかしだいたいどの店も入り口にのれんがかかっていて、中が見えにくく入りづらい。そしていくつかのお店はもう閉まっている時間帯だったこともあり、開いてるのかどうかわからない店も多かった。
加賀麩の店で詰め合わせを買った。そんなに広くないので一回りしたらもうおしまいで、尾張町の百万石通りの一本裏を歩いて近江町市場に裏側から入って通過。お店は全部閉まっていたが海鮮丼の店だけはけっこう人が入っているようだった。近江町市場の表側のバス停は、昔は狭い汚い軒下に人々が肩を寄せ合っていた印象なのだが、ミスドのあるビルの入り口フロアに変貌していた。
歩いて帰る途中、塾の帰りに使っていたバス停も通ったけど、昔はあんな屋根なんてなくて雨のときも吹きさらしだったはず。
野菜たっぷりのパスタとサラダあたりを食べたいと思い、香林坊の欧風カジュアルレストランに目をつけていたんだけど、行ってみたら貸切営業になっていたので、大和の地下でお弁当を買うことに。18時過ぎだともう閉店セールで、600円のそぼろと煮豚と野菜の煮物の弁当が400円になっていて、RF1の炙りサーモンとオレンジ入りサラダも500円くらいのが300円ちょいで買えた。
弁当を食べてのんびり本読んでたら、なんだかおなかがすいてコンビニに行き、たらチーズとカルパスとさきいかのおつまみセットを買ってきて食べ、おなかがふくれる。やたらと化学調味料の味がするけど、おいしいにはおいしい。
お風呂に入ってさらにコーヒーゼリーを食べていたら、テレビで「探偵はBARにいる」をやっていたので見ながらこの日記を書く。そのあともダラタラテレビをつけていたら、松田龍平がまた「まほろ駅前番外地」というドラマに出ていて、二人組の探偵っぽかったので似てる!と思って見ていたらなかなか面白くて最後まで見てしまった。松田龍平がツンデレっぽく甘えてたり、エンディングにわちゃわちゃしてるシーンを入れたりして腐女子をねらってる気がする。狙われてると思いつつもイイネ!と思ってしまう悲しいサガ。
5月13日(月)4日目
ホテルに荷物を預けて、バスで昔住んでいたところへ行く。バス停角にある個人商店はついに店じまいしたらしい。まわりに多少新しい宅地開発がされていたけど、前いたところは豆腐屋も残っていて全然変わっていなかった。
いつも通っていたスーパーへ。入って左手の広い通路の突き当たりにあったごく小さい本屋に入り浸っていた記憶があるが、中はまるきり変わって左手は全部ドラッグストアになっていた。そりゃ20年たってるわけだし。歯ブラシを買わなきゃと思っていたので、ペットボトルのついでに買う。
隣の回転ずしにもよく行っていたのでここで早めの昼ご飯を食べようと思ったが、開店まで30分あるので向かいのココスに入り、シーザーサラダだけ頼んでサービスのスープを飲み時間をつぶす。昔は「くるくる寿司」って名前だったけど、「もりもり寿司」に変わっていた。親子いくら、煮穴子、炙りサーモンを食べたらおなかいっぱいに。
そこから少し戻って通学路を歩くがあまり道順を覚えていない。というか、昔はいろんな道を好き勝手に歩いていたような気がする。
夢の中の自分が住んでいる町というのがあって、昔住んでいた土地いくつかのエッセンスがミックスされてできあがっており、もっとも根幹の要素を作っているのが金沢の家。大通りから一本奥まった通り沿いに家があり、川沿いに行くと林の中の精神病院、右手に進むと田んぼと曲がりくねったお屋敷街を抜けて、スーパーのある大きな四つ角。そこを右に行くと街、奥に行くと知らないエリアと山。左に行くと学校方面。左からさらに左に入ったあたりは西洋風のお屋敷があり、いつも練習をさぼっているエレクトーン教室もある。事実とはだいぶ異なる部分もあるがだいたいの位置関係は同じ。
そして、実際の昔の風景を思い出そうとするのと、夢の中で見た景色を思い出そうとするのは、頭の中では同じ操作なので、実際の記憶と夢の中の記憶はもはやごちゃ混ぜになっている。精神病院は私の記憶と異なり、林にさえぎられてもいないし窓に格子がはまったりもしていなかった。
記憶にはなかったが、見ると思い出す場所というのが多くて、そういう要素は夢の中の街にもない要素だから、妙にリアル。仏具店の看板とか、スケバンの子の実家の医院とか。マンション下の飲食店の並びに、金沢風カレーの店が新しくできてた。
景色を見ながら通り過ぎたあとで、もう一度その風景を思い出そうとすると、今見たばかりの景色なのに、長年夢の中で親しんでいる街のイメージが色濃く、夢の中の景色とさっき見た景色が表裏一体となって、角度を変えると絵が変わって見える絵はがきみたいに、チラチラと二つの風景が見え隠れする。そういう変な気分を楽しみながら歩く。
読んでる人にとっては「こいつ何言ってんだ」って感じだろうけど、自分でも「何言ってんだ」って感覚はある……。
学校の手前の田んぼ沿いの道で、田んぼのふちギリギリの側溝のフタを歩いていたらものすごく「これ昔もやってた!!!」という感覚がよみがえった。
しかし、あんな遠い道のりをよくトロンボーン持って雪の中毎日歩いたりしてたな。信じられない。
真昼間の太陽をほぼ真上から浴びて、日射病予防のために登山並みのペースでポカリスエットを飲みながら学校まで行って、帰りはバス。
学校から左奥にある別の狭い通りを戻るバスがあるはずで、精米自販機の向かいにあったはずのバス停を探すが見つからない。精米機はさすがになくなっていたがその名残はあり、近くに別のバス停を発見。察するに大きなバイパス通りが作られ、バス停がそっちに移った模様。確かに、そのバイパスからすぐに曲がって元の狭い通りに入った。行きのバス代が230円で、思ったより高かったなと思っていたのに帰りはなんと330円もとられ、料金表を二度見した。
わりと早く戻ってきたので、せっかくだから兼六園にも行くことに。すごく天気が良いので新緑があざやか。くずきりがあったら食べたいなと思っていたがお団子かお高い抹茶ばかりだったので、何も食べず。古めかしいお土産屋にふと入ったら、古九谷コピーの小皿が630円だったので、こんなに何度も見かけて何度も欲しいと思うんだから、もう自分のためのお土産として買ってしまうことにした。
帰り際に21世紀美術館へ寄り道。休館日だけど、外の色ガラスを組み合わせた「カラー・アクティヴィティ・ハウス」のきれいな色つきの影と、タレルの部屋(若者のたまり場みたいになってた)の四角く切り取った空がとてもきれいに見られてよかった。
ホテルで荷物を回収し、バスで空港へ。ホテルでバス券を買うと100円引きになる。空港でお土産を買ってスーツケースに詰めて預ける。帰りの飛行機は遠回りして飛ぶようで実質1時間くらいかかる。名古屋のほうまで行ってから海沿いに東京を目指す感じ。下のほうを飛ぶ飛行機とすれ違ったら、まさに「ぶっ飛んでいく」ような早さですごかった。雪の残った緑の山脈や大きなダム、名古屋の街、降りてきてからは幕張メッセにディズニーランドにスカイツリーにお台場と、非常によく見えて面白かった。
羽田空港で晩ご飯にパスタを食べたいと思い、高くて尻込みするが、思い切っておしゃれカフェ系の店に入り、単品で1300円もするキノコとホウレンソウのアーリオオーリオを頼む。キノコの風味がしっかりしてて、チーズを削って山盛りかけてくれたのはいいけど、全体的に味が茫洋としていてアーリオオーリオって雰囲気ではなく、1300円も払うおいしさではなかった。
帰りの電車がけっこう込んでたけど、今回の旅で1ページ目から読み始めた「エンディミオンの覚醒 下」を、家の3駅前で読み終わった。
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