パリ旅行記5日目
2006年12月13日■12月2日(土)大会4日目 国別団体戦
7:40起床、8時過ぎにホテルの朝食バイキングへ。
いろんな種類のパンと、いろんな種類のヨーグルトと、
いろんな種類のチーズがある。また、皮付きのオレンジ・
ブドウ・リンゴ・バナナなどの果物と、小瓶に入ったジャム。
しかしおかず的なものは全然なく、申し訳程度に一種類の
ハムとゆで卵作り器があるのみ。
お湯の中に、小型お玉に載せた卵を各自浸けておく仕組み
だったが、どれくらい入れておけばいいのかとか詳細が
不明だったのであきらめた。
飲み物はコーヒーはもちろん、ティーバッグがいろいろ。
コーヒーメーカーの、黒っぽいカップの絵と白っぽいカップの
絵が描いてあるボタンのうち、白っぽいほうをミルク入りかと
思って押したら、カップ半量のエスプレッソだった。
黒いほうのボタンはダブルのエスプレッソなのだろう。
フロマージュブランと書いてあるヨーグルトを食べたら
いかにも無糖無脂肪という味だったので、缶詰のフルーツ
ポンチにかけてみたらちょうどよかった。
朝食の部屋にどんどん人がやって来て、最終的には
大混雑になったが、全員白人だった。
このホテルが日本のガイドブックに載っていないからか。
9時に食事を終え、日焼け止めを厚めに化粧して、10時に
ホテルを出る。今日は外歩きで観光の日と決めてある。
まずルーブルの北側から東端まで歩いて、セーヌ川に出る。
途中で、古びた立派な教会を見つける。
ガイドブックによるとサン・ジェルマン・ローセロワ
教会というところらしいが、観光地っぽくはなかった。
もしかして開いてるかな、と恐る恐るドアを押したら
開いていた。中はほぼ真っ暗、人もほとんどいない。
とても静かで、足音が響き、荘厳な雰囲気。
1ユーロで蝋燭を買い、火を灯そうとする。
ほかに1本だけついている蝋燭があったので、そこから
火を移そうとしたら、失敗して消えてしまった……。
するとそこへ観光客とおぼしき白人の老婦人が2人。
「火をお持ちですか」と聞いたら、ハンドバッグから
探し当てたマッチで火をつけてくれた。
古い祭壇やステンドグラスをひとわたり見て、真ん中の
椅子にしばらく静かに座ってもみた。
10時の鐘が鳴っていた。いい時間だった。
一部工事中のポン・ヌフを渡り、シテ島に入る。
セーヌ川は泥の色をしていて、寒々しかった。
なんとなく人の多いほうへぶらついていく。
真ん中に大きな建物(最高裁判所だった)があって、
それをぐるっと回ると地下鉄の駅。広場に植木市がある。
さまざまな庭の飾り物やクリスマスオーナメントを見る。
アメリカっぽくない、美人な妖精の置物がいろいろあって
気に入ったんだけど、持って帰ったら絶対壊れるだろう。
第一の目的地、ノートルダム大聖堂に到着。
入り口の前に巨大なクリスマスツリーが立っている。
さすがに人だらけで、いかにも観光地ふう。
入り口の列に並ぶと、「中では飲食やフラッシュ撮影禁止」
といった注意書きが貼り出してあるのだが、そこに各国語で
「Welcome」と書いてある。日本語は「よこそう」。
「ようこそ」と正されている掲示も1か所だけあったが、
あとはみんな「よこそう」だった。
中はたいへん広いが、人が多くバシャバシャフラッシュを
たきまくっているし、ツアー客に解説をしているガイドも
いるしで、気になって仕方がない。
ちょっと祈りの場所という雰囲気ではなかった。
でもバラ窓は素晴らしかった。
残念ながらコーヒーと腹痛との因果関係が見られ、少し
お腹が痛かったのでしばらく座って休む。
「宝物庫」という表示があったので、入場料3ユーロを
払って入ってみる。たいへん豪華な杖やら儀式道具、
聖人の骨などを収めた豪華な箱、見事な装丁の本などなど。
ぼろぼろの手袋を、たいへん立派なガラスの箱に収めた
ものもあったが、きっと由緒正しい手袋なのだろう。
大聖堂を出て、裏側に回る。ゴシックの聖堂って夜に
見たら相当不気味だろうなあ。
サン・ルイ島へ渡る橋の上で、ジャズの演奏に
人だかりができていた。
公園で日本人修学旅行生の群れとすれ違った。
11:45に鐘が鳴り、12時にも鳴った。
アルシュヴェシェ橋を渡って反対の岸へ。
河岸に緑の箱が並び、古本と絵ハガキと絵を売っている。
ブキニスト、というらしい。
絵ハガキを少し買い、ガーゴイルの置物がちょっと
ほしくなるが、値段を見てあきらめる。
あと、ここではやたらヌードの絵ハガキを売っていた。
道路の反対側には、カフェや謎の工芸品を陳列した
画廊のような店が建ち並ぶ。
いろんな形の鍵かけをずらっと展示した文房具屋があって
面白いなと思って通り過ぎたが、あとで調べたら有名な
お店だったようだ。
あと、池澤夏樹が書いていた、本の装丁屋とおぼしき
店も見つけた。自分で、好きな本のページ部分だけを
持ち込み、好みの革や模様を選んで、自分だけの本に
装丁してもらい、コレクションするというもの。
そういう高尚な趣味に憧れる。
建物の角を過ぎるといきなり金ぴかの建物が現れたり
(フランス学士院)、すばらしく絵になるトンネルがあったり、
安っぽいアパートの裏手にボードレールの像があったりした。
かなり長いこと川沿いを歩き続ける。足が疲れてもう
歩きたくない、でもどこかに入って何か食べたいというわけ
じゃないし、どうしようか……と悩みながらだらだら歩く
うちに、はるか遠くにガラスの立派な建物が見えてくる。
あれがオルセー美術館か、遠いなあ……と途方にくれつつ
なおも歩いていたら、13時前ごろ、ひょっこり左側に
「オルセー美術館」の看板が出現。
外装工事をやっていたせいで、この建物がオルセーだとは
気づかずに歩いていた。
勘違いしたガラスの建物はグラン・パレ国立ギャラリー。
外で少し並び、中でもチケットを買う列に並ぶ。
13:15ごろ入り、歩き疲れているため途中で何度も
座って休みながら、中央の吹き抜けを通って上へ向かう。
オペラ座の断面やミニチュアの町並みも良かったが、
ここではアール・ヌーボーの部屋が一番面白かった。
少し前に国立博物館を見ていたから、なるほど磁器や
細工物の手法は同じだけれど、明らかにこちらのほうが
デザインに華があるなあとか、日本のものがフランスに
わたってどんなふうに変化したかわかるのが面白い。
シロクマは良い熊だと思った。
ロダンの門はかなり不気味だった。
スーラの絵は、サーカスのやつ以外小さいのに驚いた。
モネの睡蓮の絵が三枚並んだところの椅子で20分くらい
ぼーっと座って通り過ぎる人を眺めていた。
最上階に近いあたりにレストランがあり、行列ができていた。
さらにその上に「ファーストフードショップ」があり、
各自サンドイッチなどをトレイに取ってそのへんの
カウンターで立ち食いする仕組みだった。
あまり変わりばえのしないサンドイッチばかりで、
食べたいものがなかったので、エスカレーターを
降り始めたら、豪華な内装のレストランがあった。
ここにはあまり人が並んでいなかった。
メニューもそんなに高くなさそうだったので、即並ぶ。
こうして昼ご飯にありついたのは15時ごろ。
いろいろなメニューの中で、少し安い「今日のスペシャル」
を訊ねたらサーモンだというので、それにする。
あとコーヒーは鬼門なのでアイスティを頼む。
しかしこのアイスティは「薄……すっぱ……苦」という
感じで、あまりいただけなかった。
サーモンのムニエルはたいへん柔らかく、ポテトと葱の
ような野菜をソテーした付け合わせがとっても美味しい。
フランスに来て今までで一番美味しかったのが、この
野菜といっても過言ではない。
パンは固くてむしるのが大変だった。
会計を頼んだが、カードを出して待っていてもなかなか
取りに来てくれないので、しかたなく現金をテーブルの
上に放置して帰った。
食べながら、「一緒に『おいしいね』とか『きれいだね』
とか言い合える相手がほしいなあ」と思ってしまう。
昨日の夜、みんなでルーブルを回ったのがやたらと
楽しかったんだよね。突っ込み入れたり自分では気づか
ないことを指摘してもらったり、感想を言い合うことが。
もちろん、他人と一緒に行動すると自分はもっと見たい
のに先へ進まないといけないとか、そういうデメリットは
あるけど、でもやっぱり楽しい。
今まで、自分はどこへでもひとりで行くしひとりで
気ままにふるまうし、一人旅をこよなく楽しめる人間
だという自負があったのだが、なんというか「私も
ヤキが回ったな……」という気分になった。
沢木耕太郎が言うように、「旅をすることは何かを
得ると同時に何かを失うことでもある」のだ。
さて、帰りがけにお土産を買い、ソルフェリーノ橋を
渡ってチュイルリー公園の真ん中を歩き、世界選手権の
会場に16時ごろ到着。
ちょうどフィーチャー席で日本チームが戦っている。
スタンディングを見てみると、今が3回戦目で、
日本が点差をつけてトップに立っているようだ。
テーブルの上に国旗の小さい旗が立っているのだが、
私はそれを見て対戦相手をフランスチームだと思った。
赤青白が縦に並んでいるとフランス国旗だから。
しかし中央でモリカツと対戦しているのはカミール・
コーネリッセン。フランスの人だったっけ……?
そして手前にはジュリアン・ヌイテンが。あれ、2年前
ワールドチャンプになったときはオランダ人だったよね?
いつの間にフランスに移住したんだろう?と思う。
私「ジュリアンって2年前はオランダ人でしたよね?」
格さん「……今もオランダ人ですよ?」
簡単なことで、オランダの旗は赤青白の横縞である。
小旗の布がくたっと垂れて縦縞に見えたというだけのこと。
でも格さんもあとで縦縞になってる旗を見て「なんで
フランスの旗が立ってるんだろう」とおっしゃってた
くらいなので、オランダの旗ってわかりにくいと思う。
今回はウェールズの旗なんてレアなものもよく見たな。
ここまでの日本の試合は、1回戦目でブラジルに勝ち、
2回戦目でポルトガルに勝った。ちなみにポルトガルは
かなりチームロチェのルールがあやしかったらしい。
まあ、ここ以外でやることのないフォーマットだから、
生まれて初めてやるプレイヤーも多いだろうし、
折り返し点がごちゃごちゃになったりするのもわかるが。
日本人は今日みんな観光に行ったとのことで、対戦を見て
いる人はほとんどいなかったんだけど、格さんはずっと観戦
していたという。「唯一チーム戦を見られる機会ですからね」
いわゆる「死んだフォーマット」なので、やり方とか
コツを詳しくレポートに書いてもしょうがない、といえば
確かにしょうがないのかもしれないけど、見ている分には
駆け引きや会話がとても面白いフォーマットだと思う。
日本の強さの理由は、全然チームロチェをやってない
国に比べて、モリカツが過去に練習してきた経験の蓄積が
ものを言っているのだろう。
この日、18時からiPodカラー争奪双頭巨人戦のサイド
イベントがあって、17時から受付をしていた。
出たいなと思っていたんだけど、こっちに来て結局
相方探しを一切しておらず、受付を見に行ったら
すごい大行列。30分ほどで締め切ってしまった。
最終的に120チーム、7回戦になったという。
18時から始まって終わるのが夜中の1時ってこと?
それは出なくて正解だったかも。
さて、日本対オランダ戦に戻ろう。
山本さんが勝ってて、片山さんが《センギアの吸血魔》で
次のターンには勝つ、という場面。モリカツも
勝ちそうなところで、カミール・コーネリッセンが
たまらずIDを申し出てきて、モリカツは承諾。
4回戦目。
日本はさっきのIDですでに決勝進出を決めており、
オランダとポルトガルの対戦で勝ったほうが相手になる。
日本の相手はフィンランド。
ドラフトを見ていた格さんによると、日本側のカードの
出が良く、相手はかなり暗い顔になっていたらしい。
そこで日本チームは、フィンランドに勝ちを譲った。
これで相手の賞金はけっこう上がったはず。
日本にとっては何の得も損もないので、どうせなら
「恩を売っとこう」ということらしい。
「負けたらかっこ悪いけど、コンシードならカッコイイ」
オランダ対ポルトガルのフィーチャーマッチを見る。
カミールとジュリアンが勝ったが、もう1つの対戦は
途中でヘッドジャッジにポルトガルのプレイヤーが
呼び出され、そのままいつまでも帰ってこない。
オランダ勝利という決着がついたあとでようやく戻って
きたが、そのままカードを片付けていなくなってしまった。
あとで、そのポルトガルのプレイヤーがチートでDQPに
なったと知る。ホント多いな、今回は。
ともあれ、これで明日の決勝は日本対オランダとなる。
オランダは大会前から本命と言われていたので、
相手に不足はない。
このフィーチャーを見ているときに日本人プレイヤーが
ぞろぞろと観光から帰ってきた。凱旋門を見に行ったが、
すごく並んでいて上にはのぼらなかったという話をきく。
あとこの日、正式にレベル3のポイントが20から18に
引き下げられるという発表があり、大勢が喜んでいた。
今夜も晩ご飯を食べに行けそうな相手が見つからない。
20時すぎ、フードコートに行き「マラケシュ」という
エスニック料理の店で、サラダ4種類の盛り合わせと
エビアンのペットボトルのセット、10.5ユーロと
いうメニューを頼む。
トマトとキュウリのサラダ、トマトと玉ねぎのサラダ、
ツナとコーンとタケノコみたいな野菜のサラダ、
ニンジンのカレー風煮の4種類を選ぶ。
どれにもオリーブがたっぷり入っている。
パリに来てからあまり野菜を採れていなかったが、
ここで一気に補充した。
食べながら、昨夜ルーブルの帰りにみんなと別れた
ところが分かれ道だったのかなあ、などと考える。
なんとなく、子どものころから自分に常について回る
「結局どこにも所属できない」この感覚。
ポルトガルのカルバルホが同じく1人で晩ご飯を食べて
いるのを見て、明日個人戦決勝に出るのに調整相手とか
いないのかな、と少し哀れを誘った。
食べていたらジャッジの金澤さんが向こうの中華屋で
買い物をしているのを見かけた。やった、一緒にご飯
食べる人がいたと思い、トレイを持ってそっちに移ろうと
したら、そこにはジャッジの人たちが4人くらいいて、
椅子のないカウンターにぎっしり埋まって食べていた。
なんだか面白くなってしまうくらいの疎外感。
この旅の中で、この瞬間が一番メランコリックだった。
かといって、それがイヤだったわけではない。
旅に出ると、普段の暮らしの中ではあまり感じない
感情の浮き沈みが激しくて、「自分はこんなことも
思うのか」みたいな面が、すごく面白い。
しんどかったり悲しかったりするのも、それはそれで
旅の醍醐味。
サラダを食べていたらやたら寒くなってきてしまう。
店もどんどん閉まっていく。
21時すぎに帰る。
絵ハガキを書いて、写真を整理して、23時半就寝。
この日の支出:
蝋燭1ユーロ
ノートルダム宝物庫見学料3ユーロ
オルセー入館料7.5ユーロ
昼ご飯13ユーロ+アイスティ不明、チップ込み18ユーロ?
(ここだけレシートがない……)
オルセーお土産35ユーロ
夜ご飯11.5ユーロ
7:40起床、8時過ぎにホテルの朝食バイキングへ。
いろんな種類のパンと、いろんな種類のヨーグルトと、
いろんな種類のチーズがある。また、皮付きのオレンジ・
ブドウ・リンゴ・バナナなどの果物と、小瓶に入ったジャム。
しかしおかず的なものは全然なく、申し訳程度に一種類の
ハムとゆで卵作り器があるのみ。
お湯の中に、小型お玉に載せた卵を各自浸けておく仕組み
だったが、どれくらい入れておけばいいのかとか詳細が
不明だったのであきらめた。
飲み物はコーヒーはもちろん、ティーバッグがいろいろ。
コーヒーメーカーの、黒っぽいカップの絵と白っぽいカップの
絵が描いてあるボタンのうち、白っぽいほうをミルク入りかと
思って押したら、カップ半量のエスプレッソだった。
黒いほうのボタンはダブルのエスプレッソなのだろう。
フロマージュブランと書いてあるヨーグルトを食べたら
いかにも無糖無脂肪という味だったので、缶詰のフルーツ
ポンチにかけてみたらちょうどよかった。
朝食の部屋にどんどん人がやって来て、最終的には
大混雑になったが、全員白人だった。
このホテルが日本のガイドブックに載っていないからか。
9時に食事を終え、日焼け止めを厚めに化粧して、10時に
ホテルを出る。今日は外歩きで観光の日と決めてある。
まずルーブルの北側から東端まで歩いて、セーヌ川に出る。
途中で、古びた立派な教会を見つける。
ガイドブックによるとサン・ジェルマン・ローセロワ
教会というところらしいが、観光地っぽくはなかった。
もしかして開いてるかな、と恐る恐るドアを押したら
開いていた。中はほぼ真っ暗、人もほとんどいない。
とても静かで、足音が響き、荘厳な雰囲気。
1ユーロで蝋燭を買い、火を灯そうとする。
ほかに1本だけついている蝋燭があったので、そこから
火を移そうとしたら、失敗して消えてしまった……。
するとそこへ観光客とおぼしき白人の老婦人が2人。
「火をお持ちですか」と聞いたら、ハンドバッグから
探し当てたマッチで火をつけてくれた。
古い祭壇やステンドグラスをひとわたり見て、真ん中の
椅子にしばらく静かに座ってもみた。
10時の鐘が鳴っていた。いい時間だった。
一部工事中のポン・ヌフを渡り、シテ島に入る。
セーヌ川は泥の色をしていて、寒々しかった。
なんとなく人の多いほうへぶらついていく。
真ん中に大きな建物(最高裁判所だった)があって、
それをぐるっと回ると地下鉄の駅。広場に植木市がある。
さまざまな庭の飾り物やクリスマスオーナメントを見る。
アメリカっぽくない、美人な妖精の置物がいろいろあって
気に入ったんだけど、持って帰ったら絶対壊れるだろう。
第一の目的地、ノートルダム大聖堂に到着。
入り口の前に巨大なクリスマスツリーが立っている。
さすがに人だらけで、いかにも観光地ふう。
入り口の列に並ぶと、「中では飲食やフラッシュ撮影禁止」
といった注意書きが貼り出してあるのだが、そこに各国語で
「Welcome」と書いてある。日本語は「よこそう」。
「ようこそ」と正されている掲示も1か所だけあったが、
あとはみんな「よこそう」だった。
中はたいへん広いが、人が多くバシャバシャフラッシュを
たきまくっているし、ツアー客に解説をしているガイドも
いるしで、気になって仕方がない。
ちょっと祈りの場所という雰囲気ではなかった。
でもバラ窓は素晴らしかった。
残念ながらコーヒーと腹痛との因果関係が見られ、少し
お腹が痛かったのでしばらく座って休む。
「宝物庫」という表示があったので、入場料3ユーロを
払って入ってみる。たいへん豪華な杖やら儀式道具、
聖人の骨などを収めた豪華な箱、見事な装丁の本などなど。
ぼろぼろの手袋を、たいへん立派なガラスの箱に収めた
ものもあったが、きっと由緒正しい手袋なのだろう。
大聖堂を出て、裏側に回る。ゴシックの聖堂って夜に
見たら相当不気味だろうなあ。
サン・ルイ島へ渡る橋の上で、ジャズの演奏に
人だかりができていた。
公園で日本人修学旅行生の群れとすれ違った。
11:45に鐘が鳴り、12時にも鳴った。
アルシュヴェシェ橋を渡って反対の岸へ。
河岸に緑の箱が並び、古本と絵ハガキと絵を売っている。
ブキニスト、というらしい。
絵ハガキを少し買い、ガーゴイルの置物がちょっと
ほしくなるが、値段を見てあきらめる。
あと、ここではやたらヌードの絵ハガキを売っていた。
道路の反対側には、カフェや謎の工芸品を陳列した
画廊のような店が建ち並ぶ。
いろんな形の鍵かけをずらっと展示した文房具屋があって
面白いなと思って通り過ぎたが、あとで調べたら有名な
お店だったようだ。
あと、池澤夏樹が書いていた、本の装丁屋とおぼしき
店も見つけた。自分で、好きな本のページ部分だけを
持ち込み、好みの革や模様を選んで、自分だけの本に
装丁してもらい、コレクションするというもの。
そういう高尚な趣味に憧れる。
建物の角を過ぎるといきなり金ぴかの建物が現れたり
(フランス学士院)、すばらしく絵になるトンネルがあったり、
安っぽいアパートの裏手にボードレールの像があったりした。
かなり長いこと川沿いを歩き続ける。足が疲れてもう
歩きたくない、でもどこかに入って何か食べたいというわけ
じゃないし、どうしようか……と悩みながらだらだら歩く
うちに、はるか遠くにガラスの立派な建物が見えてくる。
あれがオルセー美術館か、遠いなあ……と途方にくれつつ
なおも歩いていたら、13時前ごろ、ひょっこり左側に
「オルセー美術館」の看板が出現。
外装工事をやっていたせいで、この建物がオルセーだとは
気づかずに歩いていた。
勘違いしたガラスの建物はグラン・パレ国立ギャラリー。
外で少し並び、中でもチケットを買う列に並ぶ。
13:15ごろ入り、歩き疲れているため途中で何度も
座って休みながら、中央の吹き抜けを通って上へ向かう。
オペラ座の断面やミニチュアの町並みも良かったが、
ここではアール・ヌーボーの部屋が一番面白かった。
少し前に国立博物館を見ていたから、なるほど磁器や
細工物の手法は同じだけれど、明らかにこちらのほうが
デザインに華があるなあとか、日本のものがフランスに
わたってどんなふうに変化したかわかるのが面白い。
シロクマは良い熊だと思った。
ロダンの門はかなり不気味だった。
スーラの絵は、サーカスのやつ以外小さいのに驚いた。
モネの睡蓮の絵が三枚並んだところの椅子で20分くらい
ぼーっと座って通り過ぎる人を眺めていた。
最上階に近いあたりにレストランがあり、行列ができていた。
さらにその上に「ファーストフードショップ」があり、
各自サンドイッチなどをトレイに取ってそのへんの
カウンターで立ち食いする仕組みだった。
あまり変わりばえのしないサンドイッチばかりで、
食べたいものがなかったので、エスカレーターを
降り始めたら、豪華な内装のレストランがあった。
ここにはあまり人が並んでいなかった。
メニューもそんなに高くなさそうだったので、即並ぶ。
こうして昼ご飯にありついたのは15時ごろ。
いろいろなメニューの中で、少し安い「今日のスペシャル」
を訊ねたらサーモンだというので、それにする。
あとコーヒーは鬼門なのでアイスティを頼む。
しかしこのアイスティは「薄……すっぱ……苦」という
感じで、あまりいただけなかった。
サーモンのムニエルはたいへん柔らかく、ポテトと葱の
ような野菜をソテーした付け合わせがとっても美味しい。
フランスに来て今までで一番美味しかったのが、この
野菜といっても過言ではない。
パンは固くてむしるのが大変だった。
会計を頼んだが、カードを出して待っていてもなかなか
取りに来てくれないので、しかたなく現金をテーブルの
上に放置して帰った。
食べながら、「一緒に『おいしいね』とか『きれいだね』
とか言い合える相手がほしいなあ」と思ってしまう。
昨日の夜、みんなでルーブルを回ったのがやたらと
楽しかったんだよね。突っ込み入れたり自分では気づか
ないことを指摘してもらったり、感想を言い合うことが。
もちろん、他人と一緒に行動すると自分はもっと見たい
のに先へ進まないといけないとか、そういうデメリットは
あるけど、でもやっぱり楽しい。
今まで、自分はどこへでもひとりで行くしひとりで
気ままにふるまうし、一人旅をこよなく楽しめる人間
だという自負があったのだが、なんというか「私も
ヤキが回ったな……」という気分になった。
沢木耕太郎が言うように、「旅をすることは何かを
得ると同時に何かを失うことでもある」のだ。
さて、帰りがけにお土産を買い、ソルフェリーノ橋を
渡ってチュイルリー公園の真ん中を歩き、世界選手権の
会場に16時ごろ到着。
ちょうどフィーチャー席で日本チームが戦っている。
スタンディングを見てみると、今が3回戦目で、
日本が点差をつけてトップに立っているようだ。
テーブルの上に国旗の小さい旗が立っているのだが、
私はそれを見て対戦相手をフランスチームだと思った。
赤青白が縦に並んでいるとフランス国旗だから。
しかし中央でモリカツと対戦しているのはカミール・
コーネリッセン。フランスの人だったっけ……?
そして手前にはジュリアン・ヌイテンが。あれ、2年前
ワールドチャンプになったときはオランダ人だったよね?
いつの間にフランスに移住したんだろう?と思う。
私「ジュリアンって2年前はオランダ人でしたよね?」
格さん「……今もオランダ人ですよ?」
簡単なことで、オランダの旗は赤青白の横縞である。
小旗の布がくたっと垂れて縦縞に見えたというだけのこと。
でも格さんもあとで縦縞になってる旗を見て「なんで
フランスの旗が立ってるんだろう」とおっしゃってた
くらいなので、オランダの旗ってわかりにくいと思う。
今回はウェールズの旗なんてレアなものもよく見たな。
ここまでの日本の試合は、1回戦目でブラジルに勝ち、
2回戦目でポルトガルに勝った。ちなみにポルトガルは
かなりチームロチェのルールがあやしかったらしい。
まあ、ここ以外でやることのないフォーマットだから、
生まれて初めてやるプレイヤーも多いだろうし、
折り返し点がごちゃごちゃになったりするのもわかるが。
日本人は今日みんな観光に行ったとのことで、対戦を見て
いる人はほとんどいなかったんだけど、格さんはずっと観戦
していたという。「唯一チーム戦を見られる機会ですからね」
いわゆる「死んだフォーマット」なので、やり方とか
コツを詳しくレポートに書いてもしょうがない、といえば
確かにしょうがないのかもしれないけど、見ている分には
駆け引きや会話がとても面白いフォーマットだと思う。
日本の強さの理由は、全然チームロチェをやってない
国に比べて、モリカツが過去に練習してきた経験の蓄積が
ものを言っているのだろう。
この日、18時からiPodカラー争奪双頭巨人戦のサイド
イベントがあって、17時から受付をしていた。
出たいなと思っていたんだけど、こっちに来て結局
相方探しを一切しておらず、受付を見に行ったら
すごい大行列。30分ほどで締め切ってしまった。
最終的に120チーム、7回戦になったという。
18時から始まって終わるのが夜中の1時ってこと?
それは出なくて正解だったかも。
さて、日本対オランダ戦に戻ろう。
山本さんが勝ってて、片山さんが《センギアの吸血魔》で
次のターンには勝つ、という場面。モリカツも
勝ちそうなところで、カミール・コーネリッセンが
たまらずIDを申し出てきて、モリカツは承諾。
4回戦目。
日本はさっきのIDですでに決勝進出を決めており、
オランダとポルトガルの対戦で勝ったほうが相手になる。
日本の相手はフィンランド。
ドラフトを見ていた格さんによると、日本側のカードの
出が良く、相手はかなり暗い顔になっていたらしい。
そこで日本チームは、フィンランドに勝ちを譲った。
これで相手の賞金はけっこう上がったはず。
日本にとっては何の得も損もないので、どうせなら
「恩を売っとこう」ということらしい。
「負けたらかっこ悪いけど、コンシードならカッコイイ」
オランダ対ポルトガルのフィーチャーマッチを見る。
カミールとジュリアンが勝ったが、もう1つの対戦は
途中でヘッドジャッジにポルトガルのプレイヤーが
呼び出され、そのままいつまでも帰ってこない。
オランダ勝利という決着がついたあとでようやく戻って
きたが、そのままカードを片付けていなくなってしまった。
あとで、そのポルトガルのプレイヤーがチートでDQPに
なったと知る。ホント多いな、今回は。
ともあれ、これで明日の決勝は日本対オランダとなる。
オランダは大会前から本命と言われていたので、
相手に不足はない。
このフィーチャーを見ているときに日本人プレイヤーが
ぞろぞろと観光から帰ってきた。凱旋門を見に行ったが、
すごく並んでいて上にはのぼらなかったという話をきく。
あとこの日、正式にレベル3のポイントが20から18に
引き下げられるという発表があり、大勢が喜んでいた。
今夜も晩ご飯を食べに行けそうな相手が見つからない。
20時すぎ、フードコートに行き「マラケシュ」という
エスニック料理の店で、サラダ4種類の盛り合わせと
エビアンのペットボトルのセット、10.5ユーロと
いうメニューを頼む。
トマトとキュウリのサラダ、トマトと玉ねぎのサラダ、
ツナとコーンとタケノコみたいな野菜のサラダ、
ニンジンのカレー風煮の4種類を選ぶ。
どれにもオリーブがたっぷり入っている。
パリに来てからあまり野菜を採れていなかったが、
ここで一気に補充した。
食べながら、昨夜ルーブルの帰りにみんなと別れた
ところが分かれ道だったのかなあ、などと考える。
なんとなく、子どものころから自分に常について回る
「結局どこにも所属できない」この感覚。
ポルトガルのカルバルホが同じく1人で晩ご飯を食べて
いるのを見て、明日個人戦決勝に出るのに調整相手とか
いないのかな、と少し哀れを誘った。
食べていたらジャッジの金澤さんが向こうの中華屋で
買い物をしているのを見かけた。やった、一緒にご飯
食べる人がいたと思い、トレイを持ってそっちに移ろうと
したら、そこにはジャッジの人たちが4人くらいいて、
椅子のないカウンターにぎっしり埋まって食べていた。
なんだか面白くなってしまうくらいの疎外感。
この旅の中で、この瞬間が一番メランコリックだった。
かといって、それがイヤだったわけではない。
旅に出ると、普段の暮らしの中ではあまり感じない
感情の浮き沈みが激しくて、「自分はこんなことも
思うのか」みたいな面が、すごく面白い。
しんどかったり悲しかったりするのも、それはそれで
旅の醍醐味。
サラダを食べていたらやたら寒くなってきてしまう。
店もどんどん閉まっていく。
21時すぎに帰る。
絵ハガキを書いて、写真を整理して、23時半就寝。
この日の支出:
蝋燭1ユーロ
ノートルダム宝物庫見学料3ユーロ
オルセー入館料7.5ユーロ
昼ご飯13ユーロ+アイスティ不明、チップ込み18ユーロ?
(ここだけレシートがない……)
オルセーお土産35ユーロ
夜ご飯11.5ユーロ
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